Event・Seminar
【HAPP企画】新入生歓迎行事 笠井叡ポスト舞踏公演『未完成』
新入生の方々、入学おめでとうございます。いつの時代もそうですが、社会が混沌とした渦の中に巻き込まれているような時代ですが、自我の光を照らしながら、ゆっくり歩み続けてください。
個人的なことです。シューベルトの『未完成』は、僕が今から45年前、日本から、当時の西ドイツへ移住しようと決意した時に、有楽町の第一生命ホールで最後に踊った曲です。アランフェス協奏曲は、僕のデビュー・リサイタルの時に、大野一雄先生が振付てくれた曲です。「冬の旅」は、僕の旅のテーマソングです。(笠井叡)
日時:
2024年5月15日(水)18:00開演(17:00開場)
会場:
慶應義塾大学日吉キャンパス 来往舎イベントテラス
講師:
[出演]笠井叡
[音響・照明]曽我傑
[曲目]
フランツ・シューベルト作曲 交響曲 ロ短調 『未完成』 第1楽章 第2楽章
ホアキン・ロドリーゴ作曲 アランフェス協奏曲 第2楽章
フランツ・シューベルト作曲 歌曲『冬の旅』より「辻音楽師」他数曲
[出演者プロフィール]
笠井叡は1943年三重県で生まれた。裁判官であった厳格な父親、笠井寅雄の影響下で幼少時代を過ごすが、1954年9月26日の洞爺丸海難事故で父親を亡くす。キリスト教の洗礼は受けていないが、教会生活は長く、「イエスの復活」という歴史的事実は笠井にとって生涯のテーマといっていい。江口隆哉・宮操子のスタジオで学んだことでダンスの世界に入り、後に大野一雄に出会い、三年間、個人指導を受ける。1963年10月、朝日講堂で「犠儀」を踊ったことが遠因となって土方巽と出会い、1965年11月「バラ色ダンス—A LA MAISON DE M. CIVECAWA」(千日谷会堂)に出演する。1971年天使館設立、1979年から1985年までドイツに在住した。オイリュトミー、パントマイムも視野に入れ、狭い意味での「舞踏」に囚われない表現者である。
文章家としても高い評価を得ており、神秘性、精神性を重視する姿勢は、『天使論』、『聖霊舞踏』、『金鱗の鰓を取り置く術』、細江英公との共同による写真集『透明迷宮』ほか多数の著作として結実している。その範囲は、西洋神秘学から日本の大石凝真素美『真訓古事記』まで及び、その表現は、単なる日常言語を超えて「ダンス」にまで昇華されて、熱烈なファンを持つ著述家でもある。「大宇宙の音楽が聴こえる」(『聖霊舞踏』、p. 9)あるいは「聖霊とはエネルギーであって、これなしに人は一瞬たりとも生きることができない」(『聖霊舞踏』、p. 26)と笠井が述べる時、例えばジョン・デイヴィース(Sir John Davies, 1569-1626)の詩に表れている―森羅万象を踊りとして捉える―ヨーロッパ前近代の《ダンス宇宙観》と通じ、現代日本を超えた宇宙性と歴史性がそのコトバにも姿を現わす。
笠井は『カラダと生命―超時代ダンス論』の冒頭で次のように述べる、「歴史というものが常に生きた存在として変化し続けている限り、どんな時代も一つの転換期です。けれども、一人の人間はすべての時代を生き続けているのではなく、ある特定の時代を生きているわけですから、自分が生きている時代そのものが、どのような転換期であるかをリアルに感じ取るためには、歴史全体を俯瞰することができるような、何らかの想像力を駆使しなければなりません」。この言葉に表れているように、笠井は、踊りにおいても、現代性、社会性を強く意識する。そして、2013年度「日本国憲法を踊る」で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞している。笠井叡の慶應義塾大学新入生歓迎舞踏公演への出演は、2010年度「詩と舞踏のセッション:閃光のスフィア」(吉増剛造との共演)、2020年度「日本国憲法を踊る」、2021年度「使徒ヨハネを踊る」、2022年度「今、ショパンを踊る」に続いて五度目である。
(慶應義塾大学理工学部教授 小菅隼人記)
[音響・照明]曽我傑
[曲目]
フランツ・シューベルト作曲 交響曲 ロ短調 『未完成』 第1楽章 第2楽章
ホアキン・ロドリーゴ作曲 アランフェス協奏曲 第2楽章
フランツ・シューベルト作曲 歌曲『冬の旅』より「辻音楽師」他数曲
[出演者プロフィール]
笠井叡は1943年三重県で生まれた。裁判官であった厳格な父親、笠井寅雄の影響下で幼少時代を過ごすが、1954年9月26日の洞爺丸海難事故で父親を亡くす。キリスト教の洗礼は受けていないが、教会生活は長く、「イエスの復活」という歴史的事実は笠井にとって生涯のテーマといっていい。江口隆哉・宮操子のスタジオで学んだことでダンスの世界に入り、後に大野一雄に出会い、三年間、個人指導を受ける。1963年10月、朝日講堂で「犠儀」を踊ったことが遠因となって土方巽と出会い、1965年11月「バラ色ダンス—A LA MAISON DE M. CIVECAWA」(千日谷会堂)に出演する。1971年天使館設立、1979年から1985年までドイツに在住した。オイリュトミー、パントマイムも視野に入れ、狭い意味での「舞踏」に囚われない表現者である。
文章家としても高い評価を得ており、神秘性、精神性を重視する姿勢は、『天使論』、『聖霊舞踏』、『金鱗の鰓を取り置く術』、細江英公との共同による写真集『透明迷宮』ほか多数の著作として結実している。その範囲は、西洋神秘学から日本の大石凝真素美『真訓古事記』まで及び、その表現は、単なる日常言語を超えて「ダンス」にまで昇華されて、熱烈なファンを持つ著述家でもある。「大宇宙の音楽が聴こえる」(『聖霊舞踏』、p. 9)あるいは「聖霊とはエネルギーであって、これなしに人は一瞬たりとも生きることができない」(『聖霊舞踏』、p. 26)と笠井が述べる時、例えばジョン・デイヴィース(Sir John Davies, 1569-1626)の詩に表れている―森羅万象を踊りとして捉える―ヨーロッパ前近代の《ダンス宇宙観》と通じ、現代日本を超えた宇宙性と歴史性がそのコトバにも姿を現わす。
笠井は『カラダと生命―超時代ダンス論』の冒頭で次のように述べる、「歴史というものが常に生きた存在として変化し続けている限り、どんな時代も一つの転換期です。けれども、一人の人間はすべての時代を生き続けているのではなく、ある特定の時代を生きているわけですから、自分が生きている時代そのものが、どのような転換期であるかをリアルに感じ取るためには、歴史全体を俯瞰することができるような、何らかの想像力を駆使しなければなりません」。この言葉に表れているように、笠井は、踊りにおいても、現代性、社会性を強く意識する。そして、2013年度「日本国憲法を踊る」で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞している。笠井叡の慶應義塾大学新入生歓迎舞踏公演への出演は、2010年度「詩と舞踏のセッション:閃光のスフィア」(吉増剛造との共演)、2020年度「日本国憲法を踊る」、2021年度「使徒ヨハネを踊る」、2022年度「今、ショパンを踊る」に続いて五度目である。
(慶應義塾大学理工学部教授 小菅隼人記)
定員:
無
参加費:
無料
申込み:
不要
対象:
塾生・教職員・塾員、一般
参考:
備考:
【お問い合わせ】
慶應義塾大学アート・センター
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45 Tel: 03-5427-1621
E-mail:ishimoto@art-c.keio.ac.jp
主催:慶應義塾大学教養研究センター日吉行事企画委員会(HAPP)・慶應義塾大学アート・センター
協力:慶應義塾高等学校・ポートフォリオBUTOH
コーディネーター:小菅隼人(慶應義塾大学理工学部教授)
【お問い合わせ】
慶應義塾大学アート・センター
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45 Tel: 03-5427-1621
E-mail:ishimoto@art-c.keio.ac.jp
主催:慶應義塾大学教養研究センター日吉行事企画委員会(HAPP)・慶應義塾大学アート・センター
協力:慶應義塾高等学校・ポートフォリオBUTOH
コーディネーター:小菅隼人(慶應義塾大学理工学部教授)
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