Event・Seminar



教養研究センター基盤研究講演会no.4
「教養」としての『百科全書』―共時性の中の文化と知識

 私がこのたびの講演でご紹介したいのは、きわめて逆説的な研究課題です。
ディドロ=ダランベール編集になる『百科全書』は、本文だけでもタテ40センチ、
ヨコ25センチのフォリオ版で17000頁に及び、普通の書物の100冊分にはなるでしょう。
それも同じ人間が書いているのであればまだしも、諸学万般について200人もの協力者が
ばらばらに項目を執筆しています。項目は多くの場合、他の辞書や参考書のコピ・ペであり、
オリジナルと呼べるものは意外と少ないのです。そんな波乱含みの17000頁を全部読んだなど
という研究者はどこにもいません。ジャムの作り方を説いている項目に続いて、啓示とは何か
を論じる宗教記事がくる。そんな本を誰が「全部」読むでしょうか。
すると、『百科全書』を研究するというのは、全部読んでいない書物についてあれこれ調べたり、
論じたりすることになるのです。そんな研究を研究と呼べるのでしょうか。
私の狙いは、「巨大量」を前にした人間がいかに振る舞い、どう対処するかという問題への取り
組みに尽きるでしょう。お楽しみに。

日時:
2019年7月25日(木)16:30~18:30 
会場:
日吉キャンパス来往舎 1階シンポジウムスペース
講師:
鷲見 洋一(慶應義塾大学名誉教授)
1941年(昭和16年)東京生まれ
専門領域 18世紀ヨーロッパ文学・思想・歴史

1960年~1966年:慶應義塾大学文学部文学科フランス文学専攻(学部・大学院)
1967年~1972年:フランス政府給費留学生としてフランス、モンペリエ大学文学部
(ポル・ヴァレリー大学)博士課程に入学。同大学にて博士号取得、帰国
1985年:慶應義塾大学文学部教授(フランス文学専攻)
1993年~1994年:イタリア、ボローニャ大学客員教授
2008年~2012年:中部大学人文学部教授
現在慶應義塾大学名誉教授

著書
Le Neveu de Rameau: caprices et logiques du jeu, Librairie France Tosho
『翻訳仏文法』(ちくま学芸文庫)
『「百科全書」と世界図絵』(岩波書店)
『一八世紀 近代の臨界 ディドロとモーツアルト』(ぷねうま舎)
『「いま・ここ」のポリフォニー』(ぷねうま舎より近刊予定)


参加費:
無料
申込み:
不要
対象:
研究者、教職員、関心のある学部生・大学院生
参考:
備考:


★講演会の内容を公開しました。
http://lib-arts.hc.keio.ac.jp/research/kiban/kouenkai.php
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