三田の家

三田の家(イメージ)
ある日は、いろんな学部の学生たちが集まり、誰でも参加可能なオープンな授業を行っている。またある日は、外国人留学生たちが日本人学生に入り交じり、自国のあるいは日本の文化についてのミニプレゼンをしている。またある日は、障害のある人・ない人が一緒に賑やかに歌を作るワークショップに参加している。またある日は、近くの商店街のイベントの相談のため、商店主・教員・学生たちがミーティングをしている。こうして、実に多様な人たちが、自由に出入りしながら、ある時は真剣に議論しあい、またある時は美味しい食事を囲みながら、夜遅くまで交歓する。それが「三田の家」という場所です。「三田の家」は残念ながらオーナーの都合により2013年10月26日で活動を終了することになりました。

めざすもの

慶應義塾大学、とくに三田キャンパスは、少なくともここ数十年、地域社会と非常に限られた関係しか結んできませんでした。「学生街」らしい店や雰囲気はほとんどなくなり、学生たちは授業が終わると、地域を素通りして駅に向かう。当然、地元の商店主たちは最大の顧客を失い、危機感を募らせます。
一方、キャンパス内においても、異なる学部の学生同士、あるいは外国人留学生と日本人学生、一般学生と通信教育部の学生、学生と教職員などが、自由に出入りし交歓し創造的な関係性を紡ぎだしていく、そうした場がほとんどありませんでした。 そこで、「三田の家」のメンバーたちは、キャンパスを、内にそして外に“ひらく”ために、異文化・異分野間の文字通りのインターフェイスとなる場=「インター・キャンパス」を構想し、それを実現すべく、三田商店街と協働しながら、二年余りをかけて「三田の家」のオープンにこぎつけました。

内容

そこでは、学生、教職員、留学生、地域の住民、商店主、在勤者たちが、日頃の制度的バリア・肩書から半ば解放され、カジュアルに出会い語りあい学びあいながら、自分たちの手とアイデアで、この「家」を“作って”いきます。通常の教室の堅苦しさもなく、かといって居酒屋の放縦にも流れない、オリジナルな学び、そして実践の場が、「三田の家」です。
現在は七人の教員―岡原正幸(文学部)、坂倉杏介(グローバルセキュリティ研究所)、武山政直(経済学部)、手塚千鶴子(名誉教授)、塩原良和(法学部)、日向清人(外国語教育センター)、熊倉敬聡(理工学部)―が、「マスター」を務めます。各々、ある曜日を担当し、独自の場づくりを行います。
通常、あらゆる社会的な空間には、前もって決められた用途があり、その用途に応じて利用者はそこで自分の役割を演じます。
「店」では「店員」と「客」が、「教室」では「教員」と「学生」が、「家庭」では「親」と「子」が、その空間のハビトゥスに従って役割を実現します。
ところが、この「三田の家」には、前もって決まった用途がありません。その“無目的スペース”を利用する者は、だから、自ら用途と役割を“発明”しなくてはなりません。そうした創造性がたえず交錯し、ユニークな企画・実践が生起していく場、それが「三田の家」なのです。

歴史

「三田の家」は、2006年9月、慶應義塾大学教養研究センターの研究プロジェクト、学術フロンティア「超表象デジタル研究プロジェクト」の一つ「インター・キャンパス構築研究」の一環として始まりました。
2008年度からは、慶應義塾未来先導基金公募プログラムにも選定されました。長期的には、慶應義塾と港区の共同事業である「芝の家」プロジェクトとも連携しつつ、大学と地域の恊働による21世紀的学生街の創出を目指し、2013年10月26日で活動を終了しました。

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